人手不足が深刻化する業界の救世主となるか

実際には特定処遇改善加算で給与はどのくらい上がるのか

特定処遇改善加算で介護業界はどう変わる

どの程度支給されるかをわかりやすくシミュレーション

給与アップは期待できるのか

給与アップは期待できるのか

それでは、特定処遇改善加算のルールと創設された背景を踏まえ、立場ごとにどの程度の恩恵を受けることができるのかについてシミュレーションしてみましょう。

架空の施設「特養A」

シミュレーションするにあたって、理解しやすいように架空の施設を設定します。この特養Aは従来型の特別養護老人ホームで、定員は100名、入居者の平均要介護度は4とします。また年間介護報酬は3億円で、処遇改善加算の中で最も加算率の高いⅠを取得し、職員は40名で全て正社員とします。
処遇改善加算Iで施設に入ってくるのは、介護報酬3億円×8.3%で、およそ2,500万円です。特定処遇改善加算はこれに加え、サービス提供強化加算等の取得状況に応じてⅠとⅡの加算率が設けられており、特養ではそれぞれ2.3%、2.7%となりますので、今回は高いほうの加算率を想定してみると年間介護報酬3億円×2.7%で810万円が上乗せされるということになります。この金額は年額ですので、月に換算すると約68万円となります。

「68万円」をどう分配するか

それでは実際にシミュレーションをしてみます。ここでは、40名の職員のうち8人が勤続10年以上もしくはそれに準ずる経験や技能のある介護士であるとします。1つめの方法として、特定処遇改善加算の検討段階からキーワードとしてあがっている「月8万円」を分配すると、何人に分配できるでしょうか。68万円÷8万円=8.5人となり、ベテラン介護士8人全員に分配することができます。しかし、この場合の余りは4万円となり、残りの職員にはほとんど分配できない計算となります。
そこで、ルールに基づいて段階的に分配する方法を考えてみます。仮にベテランの介護士8人に4万円ずつ分配(計32万円)し、その他の介護職32名に1万円ずつ分配(計33万円)すると、その他の職種には残りの3万円を使って1人5,000円を超えない範囲で分配することになります。
このシミュレーションでは、加算率の高い方を参考に算出していますので、実際はこれよりも加算額が少なくなる場合も十分考えられます。また、複雑なルールがありながらもその対象者の選定方法は事業所にゆだねられているため、上記のような分配額の差があると不満を持つ職員が出てくる可能性も大いにあります。

事業所によって状況に大きな差が出てくる

前述のとおり、ルールに基づいた分配方法の中でも事業所の裁量によって大きな差が生じるため、現在介護職として働いている人は自分の職場ではどういった方法がとられるのかについてよく知っておく必要があるでしょう。また、これから介護職に就いてみたいと思っている人も、事前によく確認しておくことをおすすめします。

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